バリュー投資とかグロース投資とかの整理

 FOLIOで証券分析や運用アルゴリズムに携わっているquantroです。

 この記事はFOLIO Advent Calendar 8日目の記事です。昨日は弊社KeitaMoromizatoさんによる記事でした。
 本日は、株式投資におけるバリュー投資やらグロース投資ってどういったものなの??という所について、一般的なお話をしてみたいと思います。何か強いメッセージを伝える、というよりは頭の整理に使っていただければと思います<(`・ω・´)

(注)ブログの内容は個人の意見・見解の表明であり、所属組織の意見・見解を代表しません。またブログ内容の正確性については一切保証いたしません(誤りを見つけた場合はコメント欄などでお知らせいただけると有難いです)。

====目次====

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そもそも投資の型とは

 バリュー投資とかグロース投資といった各論に入る前に、もうちょっと俯瞰的な、投資スタイルの全体像みたいなところを簡単に話したいと思います。

 資産運用の実務家が銘柄を選ぶ際に、ファンダメンタルズ分析*1といわれる分析を行うことが多いです。

 ファンダメンタルズ分析というものは、個別企業の財務情報などをベースに、相対的に株価が上がりそうな銘柄を見つける分析手法で、その際に着目する指標としてバリュー指標、グロース指標といわれるものがあります。下で詳しく述べますが、こういったバリュー指標、グロース指標に着目して投資するのがバリュー投資やグロース投資です。

バリュー投資とは

 バリュー投資というのは割安株投資と言われるものです。これは、企業の財務情報から推定される企業価値を、その企業の時価総額(発行済株式数×株価)と比較し、時価総額企業価値より低ければ、割安であると判断し、そういった割安銘柄に積極的に投資する手法です。

考え方

 この背景には、今は割安な銘柄がいずれは(株価が上昇することで)割安が解消される、という考えがあります。

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何に着目するの?

 まず、財務情報から企業価値をどのようにして推定するのでしょうか。シンプルなものとして、企業の自己資本(ざっくりというと株式公開時の資本金と内部留保の合計)を企業価値とみなす考え方があります*2。この考えに即して割高割安を数値化したものがPBR(株価純資産倍率)と言われるもので、この指標が1を下回っている場合は割安とみなします。もう一つ代表的なものとして、企業の利益を時価総額と比較するというものがあり、これを指標化したものがPER(株価収益率)と言われるものです。PERにしろPBRにしろ、小さいほうが割安ということです。

 こういった、PERやPBR等に基づき、割安銘柄に積極的に投資するのがバリュー投資ということですね。もちろん、時期によっては不調な期間もありますが、長期的に見れば有効な投資手法として知られています*3

豆知識

 ちなみに、PERひとつとっても、その算出は投資家によって異なる余地があり、あるアナリストがだしている利益の将来予想値と株価からPERを算出する人もいれば、前年度の実際の利益と株価を比較してPERを算出する人もいます。一概にどれが正解というものではないですが、具体的な指標がどういったデータから作られているか、どのデータを使うほうが自分の投資方針にフィットするか、という点については考えてみても面白いかもしれません。

 また、バリュー投資を行う際に注意する必要があるのは、割安のまま放置されてしまわないか(万年割安)という点です。例えば会社が不祥事を起こして株価が下落した場合、PBRにしろPERにしろ分子が下がるので割安になったように見えますが、そういった場合はしっかりとその不祥事の内容を確認する必要がありそうです。

 次にバリュー投資が効果を発揮しやすいタイミングについてですが、ことPBRについては「これから景気が良くなっていきそう」というような状況で効きやすいと言われています。リーマンショック後の景気上昇局面や、アベノミクス相場のスタート時などの、投資家の心理が急に良くなるようなタイミングでは、それまでに売り込まれて割安になった銘柄が、落ち込んだ分を取り戻すように株価が上昇するという感覚です。

 ちなみに、PBR=PER*ROEROEについては後述)と分解できるのですが、これはPBRが企業価値を総合的に示しており、長期的な企業価値をPER(市場からの期待が高いほど株は買われて時価総額が上がりPERが上がる。これは企業の将来性に対する期待を表しているのではないか)が、短期的な企業価値ROE(これは基本的にリアルタイムに動く数字ではなく、比較的将来に対する見通しなどが反映されておらず、短期的な観点になりやすい)が示している、とみなすことが多いです。

バリュー投資のまとめ

  • バリュー投資とは、割安株に積極的に投資する手法。
  • 具体的にはPERやPBRと言われるような指標を参考にすることが多い。

グロース投資とは

 グロース投資というのは成長株投資と言われるものです。これは、業績等が高い成長を示している企業の株に積極的に投資する手法です。

考え方

 この背景には、企業業績が成長するとともに株価が上昇していくだろう、という考えがあります。こういった銘柄の中には、先に述べたバリューの考え方で言うところの割高銘柄も当然存在しうる、という点は注意が必要です(バリューとグロースは必ずしも対立する概念というわけではないですが、対立的に語られるケースが多いですし、簡便的なグロースの定義として"バリューじゃない銘柄"と考えることも散見されます)。

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何に着目するの?

 こちらは売上高や純利益などの変化率を見ることが代表的です。

豆知識

 グロース投資をする際には、今後の業績が引き続き成長していくかどうかが重要な観点です。せっかく成長している株を買ったのに、その時がピークでその後はジリジリと株価が下がっていきました、というのは悲しいですからね。そう考えると、業績と言った際は実績値よりも予想値を用いたほうが良さそうだと考えられますね。多くの企業は決算時に次期の業績予想を発表するので、その値と直近の実績値で変化率をとってみると良いかもしれません。

グロース投資のまとめ

  • グロース投資とは、高成長株に積極的に投資する手法。
  • 具体的には売上高の変化率や純利益の変化率といった指標を参考にすることが多い。

余談:たまに聞くROEとかいう投資指標ってなに?

 ファンダメンタルズ分析において、バリュー指標とグロース指標の他に、クオリティ指標と呼ばれるものがあり、その代表例がROE自己資本利益率)です。
 クオリティ指標は、企業が稼ぐ利益の質を捉えようとしている指標で、ROEでは、株主が支払った自己資本を用いてどれくらいの利益を上げたか、という投資効率の観点で利益の質を評価しています。

豆知識

 ROEが高い銘柄は、投資効率が良いため、景気が悪くなっていくような中で、相対的に高いリターンを示す傾向を示しやすいです。いわゆる質への逃避と呼ばれる現象ですね。

 ただし、このROE、じつはなかなか使いどころが難しいです。ROEはよく平均回帰性*4が指摘されており、単に今ROEが高い銘柄に投資しても、気づいたときにはROEが下がってしまっていたoh...なんてことになってしまう可能性があります。そういった際には、ROEを構成要素に分解し*5、各構成要素について分析の上、将来的にROEが下がっていかないか、と言った点を分析してみたほうが良いかもしれません。

ROEのまとめ

  • バリュー投資とグロース投資というものの他にクオリティ投資というものがあり、高品質な利益をだしている企業の株に積極的に投資する手法。
  • クオリティ指標としては、ROEが代表的。ただし、使う際はだんだん下がっていかないか調査を行ったほうがよい。

さいごに

 だらだらと書き連ねてしまいましたが、皆さんの理解が深まれば幸いです。
 明日はmatsu_charaさんの「FASTから何か」についてです♪  宣伝を一つ!   www.wantedly.com

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*1:もう一つテクニカル分析というのも代表的な分析手法として知られていますが、これについてはまた別の機会に。

*2:他にも、企業が将来生み出す利益やキャッシュフローなどから現在の価値を正確に算出しよう、という手法も多々あります。典型的なのはDCFモデル、配当割引モデル、残余利益モデルあたりでしょうか。ちなみにこの3つだと残余利益モデルが実務上のハードルは低い印象です。

*3:学術的には、3ファクターモデルという有名なモデルがありますが、このモデルでは、株のリターンに対する説明変数の一つとしてPBR(をベースにした変数)が設定されています。ちなみにその後、4ファクターモデルや5ファクターモデルという拡張モデルも発表されている。

*4:ROEが高い銘柄はその後ROEが下がっていきやすく、逆に今ROEが低いとその後上がりやすい、ということ。典型的なケースとしては、はじめは革新的な技術で高い利益率を確保し、高ROEであったが、次第に競合企業との価格競争を行う中で利益率が低下し、ROEが低下していくケースなどが挙げられる。利益率とROEの関係性については下の脚注参照。

*5:デュポン分解と言われるもので、ROE = 財務レバレッジ × 資産回転率 × 売上高利益率 という関係性。